インタビュー 学科長/聴覚障害コース長 白澤麻弓(しらさわまゆみ)
先生のご専門は何ですか?
いろいろな研究をしてきましたが、その基盤にあるのは「聴覚障害のある人たちの対等な活躍を支えるために、必要な情報保障を生み出していきたい」という想いでした。特に大学や専門分野で活躍している聴覚障害者に対する情報保障に興味があり、聴覚障害者が求めている情報保障の内容やそれを可能にするために必要な工夫・技術について研究しています。また、私自身が大学で学ぶ聴覚障害学生支援のためのネットワーク(日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan))を立ち上げて運営してきたこともあり、聴覚障害学生支援に関する研究もたくさん指導してきました。
新学部ではどのような授業を担当するのですか?
天久保キャンパスの授業としては、「情報保障概論」(1年1学期)、「ろう・難聴者を取り巻く社会資源」(2年2学期)などを担当します。また、両キャンパス共通の科目として、「手話・点字と障害支援技術」(3年1学期)、「盲ろう者の理解と支援」(3年2学期)なども担当予定です。
その授業ではどのような内容を学びますか?
「情報保障概論」は、産業技術学部との共通科目で、聴覚障害のある学生たちが大学生活・社会生活を送るうえで必要な情報保障について、知っておくべき知識を学習します。たとえば、いつも見ている文字通訳がどんな風に入力されているのかを体験したり、情報保障を依頼するときには、どこにどうやって連絡すればいいのかを調べたりします。
「ろう・難聴者を取り巻く社会資源」も、産業技術学部との共通科目で、複数人の先生方と一緒に担当しています。このうち、私の担当箇所では、卒業後、社会に出て情報保障を利用したり、合理的配慮の必要性について周りの人に説明したりするときに必要な知識を、さまざまなワークを通して学習する内容にしています。
「手話・点字と障害支援技術」は、両キャンパスの学生がともに学ぶ授業で、聴覚障害学生と視覚障害学生が互いに自分の障害やコミュニケーション方法について学び合う科目です。聴覚障害学生が視覚障害学生に対して手話を教えたり、逆に視覚障害学生が聴覚障害学生に対して、点字や日常生活で用いている様々な支援ツールについて教えたりすることで、互いの理解を深めます。
「盲ろう者の理解と支援」も両キャンパス共通の授業で、聴覚と視覚の両方に障害のある「盲ろう」について基本的な知識を学びます。そのうえで、実際に盲ろう者のお話を聞いたり、生活や就労の状況を観察し、「もっとこうなったらいいのにな」と感じているニーズ(例:運動不足解消のためにトレーニングができる環境が欲しいなど)を引き出して、それを実現するための方法についてグループで考えたり、実際にやってみたりする予定です。
共生社会創成学部の受験を考えている学生へのメッセージをお願いします
共生社会創成学部は、障害の有無はもちろん、性別や国籍、人種など、多様な背景を持つ人々がともにその存在を尊重し、すべての人が力を発揮できるような社会を実現していくための学部です。このような考え方を「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」と言います。日本の社会は、今、D&Iの実現に向けて少しずつ動き出しています。企業の中には、D&Iを経営の柱とし、多様な背景を持つ社員を積極的に雇用したり、働きやすい環境を整備したりすることで、業績を伸ばすところも増えています。
この動きをさらに加速させるためには、企業の中にD&Iを推進していくリーダーの存在が不可欠です。社内全体にビジョンを示し、社員の教育・研修を行ったり、働きやすい環境を作るために必要な制度を導入したり、働くために必要なツールや機器の導入を提案したり…そんな力を持った人材が、今、企業の中で求められているからです。そして、せっかくそうしたリーダーを配置するのなら、ぜひその役割を障害当事者に担って欲しいというのが我々の願いです。
共生社会創成学部は、まさにこうした「D&I時代の当事者リーダーを育てていきたい」という想いから設立された学部です。新しい学部の立ち上げは、私たちにとっても大きな挑戦です。でも、その挑戦の先に、まだ見たことのない新しい未来が待っていると信じています。
障害当事者が企業や社会の常識を変える!そんな世界を一緒に迎えに行きませんか。